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南 美貴さん
新宿区立西新宿子ども園 園長
幼稚園教諭として20年近く勤務し、主任や副園長を担ったのち、2021年より西新宿子ども園の園長に。
新宿区在住。3児の母。
https://www.city.shinjuku.lg.jp/kodomo/file04_07_24_00000.html
Q: 子ども園は都心にありますが、近くに大きな公園があっていいですね!
そうなんです。
公園の運営をしている方の紹介で、緑化活動をされている団体の方々がいて、私たちの子ども園にも何かと声をかけてくださるんです。
タネ団子といって、泥の団子のまわりにタネをつけて植えるというのを、子どもたちとさせていただいたんですけど、春になったら「花が咲いたから、切り取りに来ませんか?」と誘ってくださって。切り取った花を透明のビニールに包んで、子どもたち一人ひとりに、きれいな花束にしてくださったんです。
ほかにも、球根をいただいたり。新宿中央公園には毎日のように行くので、私たちにとって園庭のような感じです(笑)。
Q:「西新宿子ども園」の特徴はどんなところですか?
子ども園は西新宿小学校の敷地内にあるので、小学校との交流が多くあります。
この間も、小学校のプールをお借りして泳がせてもらったり、空き時間に小学校の先生が子どもたちと遊んでくださったり。小学生の子が一緒に遊んでくれることもあって、昨年度は6年生が園児に読み聞かせをしてくれたり、自分たちで作った絵本をくれたりしたこともありました。
小学校には、第1校庭と第2校庭があるんですが、第2校庭に行くためには子ども園の脇を通らないといけないんです。
だから、小学生たちは通りがけに子ども園で遊んでいく感じです。そういう点はありがたいですね。
Q: 惣三さんがいたら、喜びそうな環境ですね。いろんな交流がありますね。
確かにそうですね。自然に、年上のお兄さんやお姉さんと触れ合えるのはいいですよね。
ほかにも、近くに児童館があるので、お祭りに参加させてもらったり、お年寄りが集まる西新宿シニア館というのがあって、おばあちゃんたちが手作りの人形の洋服をプレゼントしてくださったり、花壇の土づくりを一緒にしてくださったり。園児のお誕生日会に参加していただいたこともあります。
そのように、地域の方々からお声をかけていただけるのは、本当にありがたいです。
Q:南さんは、なぜ幼児教育の世界に入られたのですか?
単純に子どもが好きっていうのもあるんですけど、幼稚園実習がとても楽しかったんです。
それで、保育園のアルバイトにも行かせてもらって、それも面白くて、いろんなことを教えていただきました。それで、保育の世界に入ったんです。
お仕事を始めても、本当に楽しくて。子どもって感性が鋭くて、彼らが感じていることや思っていることに対して、「なるほど」と思うことも多くて。それに、子どもたちは短期間でものすごく変化するじゃないですか。昨日はあんなだったのに、今日はもう変わっている……。
そういう変化を見るのも面白かったし、泥んこになりながらすごく楽しそうに集中して遊んでいる姿なんかを見て、私も思わず「楽しいね」って言ったり……。
ずっと幼稚園に勤めていたのですが、子どもたちが帰った後、園の人たちと1日を振り返りながら話すのがすごく楽しくて。「こうだったよね」「ああだったよね」と言いながら、話が止まらなくて、お腹がよじれるくらい笑ったのを覚えています。
それが、私の保育の原点になっていますね。
Q:「西新宿子ども園」で大切にしていることは何ですか?
やはり1番は子どもの安心・安全を守ることですね。そして「遊び」です。
私は、「遊びが学び」だと思っているので、そういう環境をつくっていきたいし、また先生たちも楽しくないといけないと思うんです。だから、先生も楽しいと思えるような、ワクワクするような環境をつくりましょうって、お願いしています。
また、遊ぶときは既製品ではなく、自分で必要なものをつくるということも大切にしています。
あとは、自ら探求する子どもを育てるために「園内研究」を大切にしています。「不思議だな」「どうしてかな」と思ったことを、とことん調べられるような時間を持つようにしています。子どもも、先生も。
Q:大変だなと思われることはどんなことですか?
私は長く幼稚園に勤めていて、副園長までは経験したことがあるんですけど、園長になったのは今回が初めてなんです。何もわからない中ですが、勉強しながら奮闘しています。
あと、これだけ多くの園児をお預かりしていると、日々、ケガやトラブルが起きますし、保護者対応や職員の対応にも追われます。
Q:子育ての悩みを抱える親御さんにお伝えしたいことは、どんなことですか?
そうですね、今はすごく我が子のことが心配で悩んでいることも、子どもが成長すると、それは一時的なものだということがわかったりします。
もちろん、心配な気持ちはとてもよくわかるので、それは受けとめたいと思っていますが、考えていただきたいなと思うことは、「今、お子さんにとって何が一番いいことなのか。子どもがうれしいことは何だろう」という視点です。
心配になって、お子さんの将来のことを考えて、大変な想いをしないように誘導してあげようと思われるかもしれませんが、でも今のこの子は「今」しかないので、「今、経験した方がいいことは何だろう」って。
習い事も、本人がやりたいならやらせればいいと思います。将来を見据えて、ということもあるかもしれないけど、今が大事かなと、私は思うんです。
Q:一般的に、卒園後、小学校に馴染めないお子さんもいらっしゃるとよく耳にしますが、こちらの子どもたちはいかがですか?
小学校に入っても自分で課題を見つけたり、探究できる子が多いと聞きます。
西新宿小学校の校長先生は、子ども自らが学ぶ「主体的な学び」に変えていくことをめざされています。
子ども園にもしょっちゅう来てくださるし、お話も授業も楽しい方なんです。「小学校も子ども園みたいにしたい」とおっしゃってくださいますし、ふだんから交流があることはありがたいですね。
Q:今、倉橋惣三がいたら、どんなことを聞いてみたいですか?
私はコロナ禍のときに、『倉橋惣三物語』を読んでいたんですけど、倉橋惣三先生が子ども一人ひとりを大事に思い、温かく関わる姿がとても印象に残っています。どの場面でも、すごく子どもの気持ちを大事に、言葉を選びながら返していらっしゃることが胸に残っていて、私も、子どもが園長室に来たときなどは、惣三さんの真似をして、どういう気持ちだったのかを尋ねるようにしています。
そんな惣三さんがもしご存命だったら、私が今ここで行っている、園での生活の仕方、遊び方について、これでいいのか、どうしたらいいのかを尋ねてみたいなと思います。
どうしたら、惣三さんのように楽しい遊びが展開される園生活を、この子ども園で実現することができるのか、うかがってみたいです!