札幌石山保育園(北海道)

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北村 一讓(いちじょう)さん

 

社会福祉法人札幌石山福祉会
認定こども園札幌石山保育園 園長 

東京の不動産会社へ就職後、地元である札幌へ戻り、祖父母が設立した保育所に事務員として就職。
保育士資格を取得する中で、フレーベルや倉橋惣三の思想に出会う。副園長となり、子どもたちの環境向上のため、園舎を改築し「認定こども園」へ移行。その後、園長へ就任し、祖父母の意志を引継ぐとともに、より質の高い保育を目指し、より一層、倉橋惣三の著書に学んでいる。

 

https://ishiyamahoikuen.org/

 

 

Q: 素敵な園舎ですね! 

ありがとうございます。
6年前に認定こども園になったのですが、その前年に改築しました。
前の園舎は鉄筋コンクリートの箱みたいな感じだったので、改築の際は木を使うなど、もう少し札幌の自然を反映したような環境のいい園舎にしようと思いました。


もともと私の実家がこの保育園を運営していたんですが、私は不動産会社に勤務していたこともあり、建物にはすごく関心があったので、改築の際は中心になって動きました。

まず、外の自然に開かれたつくりを意識したことと、形だけでなく、時間も含めて、子どもたちができるだけ分断されずに、年長さんも、小さい子も一緒に過ごせるようにすることを大切にしました。

Q:不動産のお仕事から、この園を引き継がれたんですね。

そうなんです。
私は、5人兄弟の長男として札幌に生まれ、高校まで地元で過ごし、関西の大学へ進学しました。
その後、都市開発に憧れて東京の不動産会社へ就職したのですが、札幌の住環境の良さを再認識して、地元へ戻り、祖父母が設立した保育所に事務員として就職しました。そして6年ほど前に、当時の園長先生が退職されたので、そのタイミングで私が園長を引き継ぎました。

もともと、大学4年間は塾講師のアルバイトをしていて、そこで勉強を教えること以上に、子どもたちの成長に関わることのやり甲斐を感じてはいたんです。
でも、そもそも保育というものを知らなかったので、いろいろと参考になるものを探していたところ、倉橋惣三先生に出会うことになりました。 


Q:実際に保育に携ってみていかがでしたか?

実際に自分も保育室の中に入っていって、子どもたちと一緒に遊んでみたりしたんですけど、「これでいいのかな」って心配になったりもしましたが、フレーベルさんや倉橋惣三先生もそのようにされていたということを拝見して、頑張っているところです。

でも、子どもたちがみんなで給食を食べている様子を見ていると、何だかその子どもたちに後光がさしているみたいに神々しく見えたことがあって。理由はよくわからないんですけども、何気ないその光景が、「幸せ」みたいなものを体現しているように感じたんですよ。だから、そういう子どもたちが幸せになれる環境を用意してあげたいなと思っています。

園の玄関の前に園長室があるんですけど、窓を開けて仕事をしていると、子どもたちが「今日、楽しかった」と言いながら、嬉しそうに帰って行くのが見えるんです。そのときは、本当に嬉しいですね。これからも、そう思い続けてもらえるような園にしたいと思っています。

 

Q:今日(取材時)は「秋祭り」をされているんですね。

昨日、地域の神社の方がおみこしを持って園の前に来てくださいました。
それで一緒に写真を撮ったりしたんですけど、今日は園の「秋祭り」で、子どもたちがいろんな屋台をつくって出店しています。基本的には年齢ごとの部屋があるのですが、壁を取り外して一つにつながるようなつくりになっているので、行き来しながら楽しんでいます。お化け屋敷をつくった子どもたちもいますね。

 

この園は行事が毎月あるので、子どもたちには楽しんでもらえているんじゃないかなとは思っています。

でも、やはり日々の生活というのが一番大切だと思っていますので、日常での子どもたちとの関わりを大事にしています。

Q:特徴的な行事は何でしょうか?

やはり北国の保育園なので、10月後半から11月頃からもう雪が降り始めているんですよね。

雪に覆われた期間が長く、園庭もわりと広いので、雪遊びが充実しています。かまくらやモニュメントなどいろんな造形物をつくったり、その中で雪の性質を知ったり……。
また、雪の大地を走り回ったりすることによって、体幹が鍛えられることにもつながっています。


スキー場も近くにたくさんあるんですが、雪山を滑り降りる「チューブ滑り」というのをしています。そういったことができるのは、雪国ならではかなと思っています。

Q:いいですね。自然がいっぱいあるというのは、倉橋惣三も理想にしていますね。

「メドウキンダーガルテン」ですよね! 
自然環境には恵まれているので、そういう環境をできるだけ与えてあげて、小さいうちに味わうことが大事かなと思っています。そして、それが心の原風景になってもらえればいいなと思います。

近くにある硬石山には鹿の群れが歩いていたりして、園から肉眼で見ることができますし、その手前に豊平川という、札幌で一番大きな川ではサケの遡上を見ることもできます。また、札幌で一番有名な藻岩山に登って、そこからふるさとの街を眺めたり。海は札幌にはないので、お隣の小樽の方まで行きました。

これだけ豊かな環境があるので、活動範囲が保育園の周りだけなのはもったいないということで、地域のバス会社さんに協力していただいて、いろんなところへ行けるようにしています。

また、いろいろな専門職に就いていらっしゃる保護者の方のご協力で、例えばお寿司屋さんの方がサケの解体ショーをしてくださったり、農家の方の畑に伺って、野菜をつくらせていただいたりとか。

Q:そういう石山保育園を卒園した子どもたちのその後はいかがですか?

歩いて10分もかからないところに小学校があるので、地域の小学校との交流は結構盛んに行われています。
お散歩の時に通りがかったら、「発表会を見に来てください」とか「こんなおもちゃを作りましたよ」などと声をかけていただくこともあります。子どもたちも、小学校に対するイメージも持ちやすいかなと思います。また、小学校の先生方がこちらの園にいらっしゃって、子どもたちの様子を見ていただいたりということもあります。

 

また、子どもたちに小学校に対する疑問や不安についてアンケートをとったことがあるんですけど、それらに対して小学校の先生が一つ一つお話ししていただけるので、大きな不安要素はあまりないのかなと思っています。

Q:保育士さんとの関わりはいかがですか?

基本的には、皆さん、子どもたちのことを大事にやっていただけているのですが、忙しさの中で先走ることもあり、時に「もう少し待ってあげて」と思うこともあります。
でも、現場では皆さんなりに考えていることもあると思うので、「静かに見守る」という惣三先生のスタイルを実践させていただいています。

なかなか一人ひとりとお話しするのは難しいんですけれども、こちらも皆さんのことがわかっていないと、結局何もできないですよね。
惣三先生もそうですけれど、人間そのものへの関心や愛情、そういったものがやはりベースにないといけないなと思って接しています。

Q:保育に携わるにあたって倉橋惣三に出会われたということでしたが、惣三さんについて、どのように感じられていますか?

子どもが船のおもちゃを壊してしまったエピソードがありましたけど、そのときに、惣三先生はその子のことを温かく見守っていましたよね。
一見、大人にとっては子どものいたずらに見えることでも、子どもにとってはそこに学びがあるのだと思います。そのことを私たち職員の側が理解していないと、子どもの成長を伸ばしてあげられないので、そういうことを大事にしたいなと思いました。

また家庭人としても、惣三先生はかなりお忙しい方だったと思うんですけども、ご家族やお子さんとの関わりは大切にしていらっしゃったと思うので、私も惣三先生のようにありたいなと思っています。


実は、園長室の机の傍らに、惣三先生の本を一式並べていて、毎日少しずつ読んでいるんです。そして、一日を振り返りながら、「今日のあれは、こういうことだったんだな」と考えたりしています。たまたま開いたページに参考になることが書いてあったりするので、いつもその時々に必要な考え方や視点をいただいているなと感じています。
勉強という目的もありますが、私にとってお守りのようになっています。また最近、札幌の保育団体で研修部に配属されまして、ますます惣三先生の著書が手放せなくなってきています。




一般社団法人倉橋惣三協会

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